NEW RELEASE

WE LOVE AIR MAX 95

双葉社スーパームック
WE LOVE AIR MAX 95

AIR MAX 95だけの本を作りたいと提案して、その企画が通るのは恐らく日本の出版社だけだろう。それ程までに国内のスニーカーカルチャーは、AIR MAX 95と距離が近い。本書は2019年3月発売の『AIR MAX 95 COLLECTION』のアップデート版としての意味合いもあり、実際に収録した足数も大きく増えている。画像に添えた解説もそれぞれのディテールだけでなく、発売当時のエピソードもふんだんに盛り込んだつもりだ。

オリジナルのAIR MAX 95が発売された時代は、今のように海外のスニーカー情報がリアルタイムで共有されず、セレクトショップのバイヤーによる買い付け品が貴重な情報源だった。当時は“国内未発売”や“アメリカ直輸入”などのキャッチコピーは波状に効果的で、ストリート雑誌の広告でも良く見掛けたに違いない。

現役バイヤー時代の筆者が主に活動していたのはロサンゼルスだ。都市部にはFoot LockerやChamps Sportsといった大手スポーツチェーン店が数多く出店し、需要の高いサイズを複数ピックアップできた。米国最大のオフプライスショップの“Ross Dress For Less”では掘り出し物のスニーカーが見つかったし、スニーカー以外でもStussyの直営店や、一部のファッショニスタが注目し始めていたCHROME HEARTSを買い付けるにも都合が良かった。もちろんDesert Hillsに代表されるアウトレットモールや、全米最大級のフリーマーケットであるRose Bowl Flea Marketも、お目当ての買い付け先だった。

ロサンゼルスに到着して借りるのは、いつもフォード・トーラスのワゴンだ。当時のレンタカー屋に並んでいたのは2代目か3代目のトーラスで、新車のトーラスが借りられた時にはそれだけで気分がアガったものだ。日本国内ではサイズを持て余し気味になる90年代のトーラスワゴンも、クルマ社会のロサンゼルスでは非常に使いやすく、買い付け品を大量に積み込むのもお手の物だった。Foot LockerやChamps Sportsのショッパーがむき出しでは車上荒らしにあうリスクが高くなるので、良い感じに“ヤレた”不透明のビニールバッグを持参して、スーパーで大量に買い物したようにカモフラージュしていたのも思い出だ。

近未来的なビルが立ち並ぶ都市部に対して、ロサンゼルス郊外は砂漠が多い。東へ向かうRoute 10はともかく、ラスベガス方面に北上するRoute 15は“砂漠の一本道”が延々と続く。その時間に必要なのは音楽だ。当時はCDだけでなくカセットテープ用のデッキを積むレンタカーが多く、買い付けに出発する前には厳選した曲を詰め込んだテープ作りがお約束だった。ロサンゼルスのフリーウェイを走る車内で聴く曲と言えば洋楽をイメージするかもしれないが、現地では意外と日本の曲が恋しくなるもの。当時のヘビロテ曲はサザンオールスターズの『胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ』。雲ひとつないRoute 15には、サザンの曲が良く似合っていた。

双葉社スーパームック『WE LOVE AIR MAX 95』では、当時の記憶を辿りながら書き留めたコラムも掲載している。AIR MAX 95がストリートシーンの王様へと昇華した背景にも興味があるスニーカーファンには、是非とも手に取って欲しい1冊だ。

B5判フルカラー:144ページ

2025年05月26日発売

2,200円 (本体2,000円)

SAMPLE

EDITOR’S PROFILE

HIROSHI SATO

原宿エリアのアパレルショップスタッフ経験を経て、神奈川県平塚市にてセレクトショップ“HAND CARRY”をオープン。約6年にわたりオーナー兼バイヤーとして活動すると共に、『Boon』や『Street Jack』などに資料提供を続け、1990年代後半のスニーカーブームの一端を担った。その後ライター業やPRプランナーなどとして活動する中でもスニーカーに対する情熱は失われず、2014年に創刊した『SNEAKER FANBOOK』のディレクターを担当。翌2015年からはディレクター兼ライターに就任し現代に至る。履けなくなったスニーカーは捨てる派のため、所有するスニーカーの数は決して多くは無いものの、AIR JORDAN 1を中心に3桁のコレクション数を常にキープ。スニーカー系ライターの中では、最も多くのスニーカーを自腹で購入したひとりと自負している。興味の対象となるスニーカーは、誰もが知る人気モデルに対する興味は当然として、さほど注目されていないスニーカーから、お気に入りの1足を探し出す行為に執念を燃やすのが特徴だ。

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