HYPE SNEAKERS COLLECTION

双葉社スーパームック
HYPE SNEAKERS COLLECTION

2023年4月25日発売の『HYPE SNEAKERS COLLECTION』では、スラングの“HYPE”が持つ「ワクワクする」と表現すべき本来のニュアンスを基に、Off-WhiteとSupreme、そしてTravis Scottが提案したNIKE製コラボレーションスニーカーに加え、世界中のファンを“ワクワクさせる”AIR JORDAN 1がベースのコラボモデルを掲載した。

過去のSFBでもOff-WhiteやSupremeとのコラボモデル特集は行っているものの、限定スニーカーのリリースラッシュは続き、掲載バリエーションもかなり増加している。なによりSFBのOff-White特集はVirgil Ablohが亡くなる以前の企画であり、画像に添えた文章も異なるニュアンスになるのも当然のこと。Off-White特集を掲載した2020年1月発売の『SFB 2020』を所有しているならば、各モデルの文章と是非比較して欲しい。

編集チームが掲げる「みんなで創るスニーカー本」のコンセプト通り、この『HYPE SNEAKERS COLLECTION』でもInstagram上で撮影モデルの募集を行った。最近では製作チームに対する信頼感も増したのか、本当に沢山のスニーカーファンからオファーを頂き、サイズやコンディション等の条件を検討し、お借りする方を選出する工程に相応の時間を費やしている。“嬉しい悲鳴”とはまさにこの事なのだろう。

ただ、そうしたオファーの中には編集担当として非常に魅力を感じつつ、掲載をお断りするスニーカーも存在する。例えば発売前の試作品や実際には発売されなかった、いわゆるサンプル品も、掲載させて頂くのが難しいスニーカーのひとつだ。サンプル品のオファーを頂く方は大抵の場合かなり経験を積んだコレクターで、その真贋について疑うのも失礼で、そこを疑うケースは殆どない。ただ、チャリティーオークションに出品されるなど入手方法が広く知られている(もしくは調べれば裏通りができる)非売品以外では、入手ルートを誌面で紹介しないとごく一部の心無い読者から「偽物では?」と揶揄されるリスクが生じてしまう。

実際のところサンプル品や非売品を手に入れるルートは様々だ。ただ、親しい業界関係者を通じて手に入れたケースでは、入手ルートを公開すると関係者にも迷惑がかかるのは避けられない。だから入手ルートも非公開となる。そうした出所が不明なレアスニーカーに対しては、ヤキモチを含みつつ疑いの目が寄せられがちだ。オファーしていただいた方から見れば「上手くやれよ」と気分を害したかもしれないが、編集チームとしても「僕らのスニーカー本」でファン同士に軋轢が生じるのは本意ではない。言い訳にように聞こえるだろうが理解して頂けるとありがたい。

そんな希少価値の高いサンプル品や非売品のスニーカーは、僕らと距離の遠い存在かと言うと実はそうでも無かったりする。もちろんNIKEの人気モデルがベースの非売品となれば話は別だが、非売品スニーカーを手に入れる事自体は“誰にでも平等にチャンスがある”と評して差し支えない程だ。

実は筆者も数年前に、サッカニーのF&F(Friends and Family)と呼ばれる非売品を某ネットフリマで購入した。そのサッカニーはドイツのスニーカーブティックとのコラボモデルで、一般発売されたカラーとは別に、非売品専用の限定カラーを150足のみ製作。その全てがドイツで開催されたイベントにて関係者に配られている。

前提として、ネットフリマに偽物が少なからず存在する以上、レアモデルを安易に購入するのは避けるべきだ。このサッカニーを見つけた時も、頭の中では「ドイツだけで配布された非売品スニーカーが日本のネットフリマで買えるハズが無い」と警鐘が鳴り響いていたものの、「このチャンスを逃したら二度と手に入らない」と言う物欲が勝ってしまった。何より奇跡的にマイサイズ。値引き交渉もせず即購入したのは言うまでも無い。

不躾とは承知の上で、取り引きが終了後に「お答え頂けるのなら」と前置きして入手ルートを伺ったところ、どうやら外交官のご家族だった様子。その外交官の方が前記したドイツのイベントに招待され、F&Fモデルのウルトラレアスニーカーをプレゼントされたものの「履かないから」と日本で暮らすご家族の手に渡り、そのご家族も「履かないから」とネットフリマに出品したのだと教えて頂いた。

スニーカーにとって致命的とも言える「履かないから」との理由でたらい回しにされたストーリーには少々モヤモヤするが、筆者にとってはお宝以外の何ものでも無く、収まるべき場所に収まったと思っている。何よりサッカニー人気が今ひとつの日本だからこそ生まれたエピソードで、限定モデルの人気が高い北米やヨーロッパでは一瞬で売り切れていたに違いない。

現実的には『HYPE SNEAKERS COLLECTION』に掲載したクラスの非売品やサンプルを手に入れるには、ごく限られたコレクターにのみ開かれている特別なルート(人脈)が必要だ。ただ、可能性の話であればゼロでは無いのも事実である。希少価値をうたう非売品やサンプル品の中にはフェイクも含まれているのも現実で、安易に手を出すには余りにもリスクが高い。ただ、千載一遇のチャンスが巡ってきた時には大いに悩み、検討してしまうのは、スニーカーファンの性と言うべきものだろう。

B5判フルカラー:144ページ

2023年04月25日発売

2,145円(本体1,950円)

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