AIR JORDAN COLLECTION

双葉社スーパームック
S.F.B.
スニーカーファンブック 2017 A/W

2016年9月にVol.6が発売された『スニーカーファンブック』のアップデート版として、ストリートスナップをメインコンテンツとした新たな『スニーカーファンブック』。定番の東京や大阪のストリートスナップに加え、全国の"スニ会"にご協力いただき、全国12都市で撮影を敢行したリアルユーザーのコーディネイトカタログ。各エリアのコーディネイトから感じられる"地元らしさ"は、日本のスニーカーカルチャーが、東京のものだけではない事実を主張する。さらに巻末ではアウトレットセンターでの"買い物バトル"や、人気ユーチューバーのスペシャルコンテンツを掲載。徹底的に現代的なスニーカーライフの表現にこだわった1冊だ。

B5判フルカラー:144ページ

2017年10月26日発売

本体1,400円 + 税

SAMPLE

COLUMN

『SNEAKER FANBOOK』から『S.F.B.』へ

2017年10月26日に発売した新しい『SNEAKER FANBOOK』は、メインロゴを『S.F.B.』にリニューアルした最初の1冊だ。『S.F.B.』以前の『SNEAKER FANBOOK』では、各スポーツブランドの最新モデルが特集ページの主役だった。新製品情報の企画を進めるためには各ブランドのショウルームに通っては発売前の情報を収集し、掲載アイテムを決め、発売前のサンプル品を撮影させてもらうのが基本の手順となる。ただ、情報収集を開始してから書店の店頭に並ぶまでは、『SNEAKER FANBOOK』の場合では最低でも1カ月の時間が必要だ。その期間中にもInstagramを中心にリーク情報が飛び交い続けている。1カ月前にはスクープに近い情報であったとしても、本の発売日には誰もが知っているありふれた情報になっている…… と言うのも良くある話だ。

もちろん新製品情報の中にも厳格なエンバーゴ(情報解禁日)が設定され、発売されるまで情報が一切漏れないように配慮されたケースもある。『SNEAKER FANBOOK』で言えば、2016年の“AIR MAX DAY”に合わせて発売された“HTM”などがそれにあたる。ただ、そうしたケースは非常に特別なものだ。“一冊丸ごとスクープ情報の本”が作れるなら読者メリットも大きいのだろうが、凄まじい速さで情報がアップデートされ続ける世の中で、スニーカー雑誌に掲載する全てのプロダクトをInstagramやWebニュースよりもフレッシュにするのは現実的とは言えない。だからこそ『SNEAKER FANBOOK』から『S.F.B.』へリニューアルするためには、新製品特集に代わる主役が必要不可欠だ。

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時代に求められるスニーカー情報誌とは

SNS時代のスニーカー情報誌に求められる役割は何か。その答えは決してひとつではないだろう。情報量が増殖し続けるWeb上のコンテンツに対し、紙の情報誌が得意とするのは“情報の編纂(へんさん)”だ。編纂とは世の中の情報を集め、新たなストーリーを創出する手法を意味する言葉である。既存の情報を並べる“編集”の対義語のように使われる事もある言葉だが、編纂と編集は1冊の中で共存できる。例えば『AIR JORDAN ORIGIN』や『AIR MAX COLLECTION』などのコレクターズムックは、スニーカーの直接的な情報を、テーマに沿った順番で掲載する“編集作業”と、デザイン開発までのエピソードや発売時の“空気感”を盛り込む“編纂作業”を同時に行う。その作業のアウトプットとして出来上がるコレクターズムックには、図鑑のような情報のアーカイブ性を持たせつつ、それぞれのバックストーリーを知り、憧れや愛着を深められるように構成している。

では、新しい『S.F.B.』ではどうするべきか。それ以前の『SNEAKER FANBOOK』を読み直し、各コンテンツを再確認していく中で白羽の矢を立てたのが“ストリートスナップ”だ。ストリートスナップは初期の『SNEAKER FANBOOK』から続くコンテンツのひとつで、東京だけでなく、名古屋や大阪のスナップに加え、スニーカーファミリーのコーディネートを掲載してきた。ただ、Instagramを利用している人なら分かる通り、ストリートスナップこそSNS向きの情報と言える。気の向いた時に今日のコーディネートを掲載できるだけでなく、「#ストリートスナップ」や「#おしゃれさんと繋がりたい」などのハッシュタグで検索すれば、参考にすべきスニーカーコーディネートがいくらでも検索できる。そうした背景を考えると、誌面にストリートスナップを掲載する事が時代に合っていないようにも思えるが、SNSの投稿は基本的にパーソナル(個人)に紐づく情報で、地域によるスニーカーカルチャーの違いはInstagramでは感じにくい。

その点、『SNEAKER FANBOOK』に掲載したスニーカーコーディネートでは、東京と名古屋、そして大阪の各エリアの“空気感”があった。履いているスニーカーは同じでも、合わせるアウターやパンツのサイジングに独自の傾向が現れて、東京らしさ、大阪らしさを醸し出していた。日本におけるスニーカーカルチャーの発祥が上野と原宿であるため、スニーカーコーディネートも東京が話題の中心になりがちだが、それ以外の都市部でも単なる東京のコピーではなく、独自の文化が育っているように感じたのだ。その“空気感”をアーカイブ(保存記録)すれば、後世に伝えるべき意味のある企画になるのではないか。そこに気付いてから、『S.F.B.』における企画の軸をストリートスナップにすると決めるまでに、そう時間を必要としなかった。

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全国12都市のストリートスナップを掲載した前代未聞の一冊

メインの特集にストリートスナップを取り上げるならば、何としても撮影エリアを拡大したかった。東京や名古屋、大阪に限らず撮影エリアを拡大すれば、“空気感”のバリエーションが増えるハズで、企画としても面白いものになるのは間違いない。何より「SNEAKER FANBOOKのストリートスナップに興味はあるけれど、撮影場所が遠くて参加できない」という声が以前から寄せられていて、“東京以外のエリアでストリートスナップ撮影会を実施したい”という考えに対しては、多くのスニーカヘッズから賛同を得られる確信があった。ただ、理想をぶち上げるのは簡単だが、それを実現するには様々なハードルがある。ストリートスナップは基本的に土曜、もしくは日曜の週末に撮影するのが基本だ。取材期間が約1カ月と仮定すると、その週末は4回、もしくは5回しかない。そのうち3回は東京、名古屋、大阪に使わざるを得ず、エリアを拡大すると言っても、1箇所増やすのが精一杯なのである。もちろん土曜日に名古屋、日曜日に大阪というスケジュールも組めなくはないが、天候のリスクを考えると、予備日も確保しなければならない。

その打開策としてぶち上げたのが、撮影会のサポーター制度である。全国のインスタグラマーの中には、一眼レフを使って自身や友人のコーディネートを投稿している人がいる。また、スニーカー好きが集まって盛り上がる“スニ会”でも、スナップ撮影をコンテンツのひとつとして楽しんでいる。そうした撮影会のノウハウを持つインスタグラマーたちに協力していただき、全国各地のスニーカーコーディネートを掲載できないかと考えたのだ。言うまでも無く、撮影のレギュレーションは『S.F.B.』仕様に合わせてもらう必要があるため、面倒だと感じられてしまう部分も出てくるだろう。どれだけの協力者が得られるのか全く予想できなかったが、いざInstagramで募集を開始すると全国から立候補の声が挙がったのだ。正直、嬉しい誤算だった。

この企画を進める中では“やってみなければ分からない”と、見切り発車した部分もあり、各エリアのサポーターの方々にとっては想定以上の労力になったかもしれない。だが、そうした協力を得た結果として、10月26日に店頭にならんだ『S.F.B.』には、編集部で撮影したエリアを含め、全国12都市のストリートスナップが掲載されている。スニーカーをテーマにしたストリートスナップを掲載する情報誌が元々少ないとは言え、これだけ広範囲のエリアにわたるリアルユーザーのコーディネートを掲載した例は、恐らく前代未聞だろう。

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