AIR JORDAN ORIGIN

双葉社スーパームック
AIR JORDAN ORIGIN
エアジョーダン・オリジン

AIR JORDANシリーズの原点であるAJ1のみを150種以上集め、それぞれに詳細な解説を加えた、現時点で世界に唯一のスニーカームック。"シャッタード・バックボード"や"デビッド・レターマン"等、それぞれのニックネームの語源も細かく解説しているので、『エアジョーダン・コレクション』と揃えることで、奥深いAIR JORDANの世界を体感できるハズだ。中でもブラック&レッドカラーの"BRED"と"BANNED"の解説は、これまで語られることの無かったレベルまで掘り下げたもので、その内容は相応のスニーカーヘッズでも驚くべきもの。全編に掲載される撮り下ろし画像だけでなく、文章も必読の"読む図鑑"として構成した。

B5判フルカラー:144ページ

2017年8月22日発売

本体1,900円 + 税

SAMPLE

COLUMN

AIR JORDAN 1しか載っていないスニーカー本

恐らく世界初のAIR JORDAN 1しか掲載されていないスニーカー本である、『AIR JORDAN ORIGIN』。あらゆる"スニーカー"の中で最も高い人気を誇るAIR JORDAN 1だけに、雑誌でスニーカーの特集があれば必ずと言って良いほど取り上げられ、表紙にAIR JORDAN 1を使った本は数多い。その理由は単純明快で、表紙にAIR JORDAN 1を使った本は書店でもひと際目立つからだ。この『AIR JORDAN ORIGIN』の表紙に、コラージュ仕立てのAIR JORDAN 1を大きく掲載している理由も、ひとりでも多くのスニーカーヘッズに手に取って欲しい思いがあるからだ。そのためにも、本書のタイトルで重視したのも"分かりやすさ"だ。弁当とかガンダムとか、どこかで聞いた名前だな、と思ったかもしれないが、そこに至るまでに、充分に検討を重ねている。知っての通り、AIR JORDAN 1は30代以上も続くシリーズの原点だ。だから"原点"を意味する言葉を是が非でもタイトルに使いたかった。今の時代は本当に便利で、Googleの翻訳ツールに単語を打ち込めば世界中の言葉に一瞬で翻訳してくれる。"原点"という言葉はオランダ語なら"OORSPRONG"、ハワイの言葉なら"KAOMI"だ。どちらも雰囲気的には悪く無いが、やはり英語の"ORIGIN"が分かりやすい。周囲からも「……弁当」「……ガンダム」という声が聞こえてきたが、何事も分かりやすさは大切だ。

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約1年前にはコンセプトが固まっていた

この『AIR JORDAN ORIGIN』は、同じAIR JORDANをテーマにしたの『AIR JORDAN COLLECTION』から約1年を経て発売された。ここで"構想1年"と言っておけば聞こえが良いかもしれないが、正直に告白すると『AIR JORDAN ORIGIN』の編集作業を行っている段階で"AIR JORDAN 1だけの本"と言う構想を固めていた。その切っ掛けになったのは、『AIR JORDAN COLLECTION』の編集期間中に撮影した、1足のAIR JORDAN 1である。それは1985年のオリジナルでも、2015年発売の"SHATTERED BACKBOARD"でも無く、2011年に米国のアウトレットでひっそりと発売された"BANNED"だ。2016年にも同じ"BANNED"と呼ばれるカラーウェイが発売されているが、2011年版の"それ"はヒールパーツに大きく"×"が描かれ、履き口の内側に、2016年版とは異なる数字がプリントされている。その数字こそが店頭で正規に発売されず、全ての在庫がアウトレット行きになった理由であり、ある"AIR JORDAN 1の不都合な真実"を証明するディテールでもある。そのテーマに正面から向き合う意味で、いつかAIR JORDAN 1だけの本を作りたいと考えていたのだ。

AIR JORDAN 1の不都合な真実

『AIR JORDAN ORIGIN』製作の切っ掛けにもなった"AIR JORDAN 1の不都合な真実"とは、スニーカーファンなら誰でも知っている有名なエピソードを否定するものである。マイケル・ジョーダンがAIR JORDAN 1を着用している当時、"BRED"と呼ばれるブラックとレッドにアッパーを染めるカラーウェイが、NBAが定める規定に違反し、その罰金を肩代わりして"BRED"をNBAの公式戦で履かせ続けたと伝えられるエピソードは、スニーカーにある程度興味があれば誰でも知っているだろう。だが、それは販売促進と話題性の演出を目的としたナイキの"作り話"であり、2011年版"BANNED"の履き口にプリントされた文字が撮影できれば、それが証明できる。この詳細を改めて書くと、それこそ1冊の本が出来てしまう程の文字量になるので、興味があれば『AIR JORDAN ORIGIN』に掲載したP.003からの巻頭コラムとP.006からの1985年に発売されたオリジナルの"BRED"、そしてP.022に掲載したアウトレット行きとなった2011年版の"BANNED"、最後にP.031で紹介した2016年版の"BANNED"の文章を確認して欲しい。"AIR JORDAN 1の不都合な真実"の歴史と、ナイキの"作り話"の真相が分かるはずだ。

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王道以外のカラーについても語りたい

その"不都合な真実"に正面から向き合いたいとは言ったものの、その不正を追求するつもりは全くない。気持ち的にはむしろ逆で、"ナイキに乗せられちゃったね"的に、スニーカー好きの友人と会話を楽しむための"ネタ"を提供したいだけの話だ。それが"作り話"だったとしても、ナイキが作ったエピソードがスニーカーマーケットに大きな影響を与え、NBAを動かし、あらゆるスポーツメーカーから色鮮やかなバッシュが発売されるようになったのは、間違いなくAIR JORDAN 1の成功が影響している。今も様々なAIR JORDAN 1のカラーバリエーションが世界中のスニーカーヘッズを熱狂させているのも、その"作り話"からAIR JORDAN 1が注目されたからだ。だからこそ"AIR JORDAN 1の不都合な真実"も、笑い話にして楽しむのが丁度いい。そうして生まれた様々なバリエーションカラーにも、ひとつひとつバックストーリーが存在するのも魅力である。例えばOGの"CARMINE"を履いてアルバムのジャケット撮影に臨んだラッパーや、RTTGの"BARCELONA"に蛍光カラーが使われているのも理由がある。オークションに出品されてもそれ程話題にならない"JOKER"や"ZINC"、"ME.BOOBER"にだって語るべきエピソードはある。そんな王道カラー以外のAIR JORDAN 1についてもしっかり語る本があっても良いはずだ。

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Instagramを活用したからこそ完成した1冊

ただ、主役以外のカラーウェイを語りたくても、それを撮影するのは本当に困難だ。いわゆる人気モデルであれば、履かずにコレクションされていたり、丁寧に履かれている個体が多く、それらをお借りして撮影するのも難しくない。ただ定番カラー以外のバリエーションモデルとなると、そもそもコレクションしているスニーカーヘッズを見つけ出す事が難しい。そこで活躍したのがInstagramだ。例えばAIR JORDAN 1には他のAIR JORDANシリーズのデザインを取り入れたハイブリッドモデルが存在する。通常のAIR JORDAN 1とは異なる魅力にあふれるバリエーションモデルだが、いかんせん"知る人ぞ知る"モデルであり、これをコレクションしている人など想像もできない。そこでInstagramに「〇〇を持っていませんか?」と投稿すると、所有しているスニーカーファンからコメントやメッセージが入り、撮影に向けての交渉が可能になる。それまで掲載を諦めざるを得なかったスニーカーが、Instagramのお陰で撮影できるようになり、構想通りの企画を実行に移すことができる。それは本を作る立場としては、非常に大きな進歩だ。出版業に関わる人の中には、無料で情報が手に入るSNSを敵視している人がいるが、恐らくこれからの編集という仕事においては、InstagramをはじめとするSNSを活用する能力も求められるのだと考えている。WEBやSNSの情報をコピペしては本末転倒だが、その使い方さえ誤らなければSNSと"紙の本"は、これからも共存できるはずだ。

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