AIR JORDAN ORIGIN

双葉社スーパームック
ナイキ・バッシュ・コレクション

ナイキ製バッシュを約190足掲載しながら、AIR JORDANシリーズが1足も紹介されていない前代未聞のスニーカームック。AIR FORCE 1やDUNK等のオールドスクール系から、モアアップテンポやポジットのようなハイテクバッシュを選りすぐり、AJシリーズだけでは語り切れないナイキ製バッシュの魅力を堪能する1冊。AF1"Sakura Ueno"やオリジナルの"キャットダンク"をはじめとする超レアスニーカーだけでなく、ポジット系モデルを40種以上集めた、コダワリのセレクトで他誌と一線を画す、全てのバッシュ好きに贈るスニーカームックに仕上げた。

B5判フルカラー:144ページ

2017年3月20日発売

本体1,900円 + 税

SAMPLE

COLUMN

AIR JORDANが掲載されないスニーカー本

『AIR JORDAN COLLECTION』の発売から約半年後、新たなスニーカームックの企画がスタートした。AIR JORDANという王道テーマに続く候補として、初期段階ではAIR MAXやAIR FORCE 1の名前が挙がっていた。確かに王道スニーカーを取り上げれば分かりやすい本になる。ただ、図鑑を意識して情報をアーカイブするスニーカームックという特性を際立たせるためには、独自の切り口を創出するアプローチも間違いではない。この企画を進めていた2017年初頭は、多くのスニーカー系雑誌が書店の店頭に並んでいた。その中からスニーカーヘッズに手に取ってもらうために、"他とは違う"テーマが必要となる。当時のスニーカーカルチャーと向き合いながら、差別化を図るテーマとして結論付けたのがAIR JORDANシリーズを一切掲載しないナイキ製バッシュの本、『ナイキ・バッシュ・コレクション』だった。

大切にしたかった"バッシュ"というタイトル

今さら説明の必要は無いかもしれないが、"バッシュ"はバスケットボールシューズの略語であり、日本で誕生したキーワードだ。もちろん海外のスニーカーヘッズには通じない言葉であり、あえて英語表記に変換するなら"Kicks"が最も近いだろう。但し"Kicks"は、ランニングシューズやトレーニングシューズも含む"スニーカー"を表すキーワードで、バスケットボールシューズだけを意味する"バッシュ"とはニュアンスが異なる。また、国内においても真剣にバスケと取り組むボーラーにとっては、"バッシュ"はあくまでバスケットボールのためのパフォーマンスシューズであり、AIR FORCE 1やAIR FLIGHT 89のようなオールドスクール系モデルを"バッシュ"と呼ぶことに、一部のボーラーは抵抗を感じるという。AIR FLIGHT 89を履いてコートに立つと、「スニーカーを履いてバスケをするのか」と、ちょっと舐められた気持ちになるのだそうだ。そうしたプライドを無視する訳ではないが、バスケットボールシューズが日本のスニーカーカルチャーを育んだのも事実であり、いつの時代も"バッシュ"と呼ばれてきた。だから、本書のタイトルも『ナイキ・バッシュ・コレクション』にこだわった。スニーカー本ではタイトルを英語表記にするのがお約束だが、"バッシュ"を正しく表す英単語は存在しない。なので、この本はカタカナ表記が正式なタイトルなのである。

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オールドスクール vs ハイテク・キックス

話題を本書のコンセプトである"AIR JORDANが掲載されないスニーカー本"に戻そう。いつの時代もAIR JORDANシリーズはスニーカー本の花形だ。ナイキのバッシュをテーマとするムック本であれば載っていて当然なのだ。だからこそ、"AIR JORDANが載っていない"だけで、企画的に充分な差別化となると考えた。Webサイトとは異なりページ数が限られている紙のムック本ではAIR JORDANを掲載すると、その掲載ボリュームの比重が高くなってしまうのは避けらず、その煽りで他のモデルの掲載点数が減り、小さな画像のみで紹介されることになる。これは過去のスニーカー雑誌で繰り返されたパターンだ。つまりAIR JORDANを掲載しなければ、それ以外の"バッシュ"を詳細に紹介できるのだ。これは読者メリットにも繋がるだろう。もちろんページ数を際限なく増やせばあらゆるモデルを紹介可能だが、膨大な情報は"編集"という取捨選択を経て初めてコンテンツとなり、読者に向けて提案するメッセージとなる。それこそが紙媒体の醍醐味だ。幸いなことに、ナイキ製バッシュにはAIR FORCE 1やDUNKのようなオールドスクール系プロダクトと、MORE UPTEMPOやFOAMPOSITEに代表されるハイテク系キックスの双方に、人気モデルが存在している。実際にはオールドスクールからハイテク・キックスへと進化する過程で、様々な名作バッシュが存在するが、あえて両極端のスニーカーをバランス良くピックアップすることで、決して一辺倒ではない"バッシュ"の楽しさを伝えたかったのだ。

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集まり始めたレアアイテム

『AIR JORDAN COLLECTION』に引き続き、『ナイキ・バッシュ・コレクション』でもスニーカーファンが所有するコレクションを撮影させていただいた。企画の骨子を整え、撮影したい"バッシュ"の希望を伝えると、本の主役になり得るレアアイテムが続々と集まりはじめた。例えばAIR FORCE 1であれば上野のミタスニーカーズがプロデュースを手掛け、世界のスニーカーヘッズに衝撃を与えた"桜"のプロモーションサンプルが撮影できた。さらに2017年にDUNKをベースに復刻された"CO.JP"のオリジナルである、"温故知新"が掲載できたのも非常にタイムリーだった。2017年の復刻モデルしか知らない世代のスニーカーヘッズにとっても、デザインの源流を知る機会は価値があると信じたい。また、ハイテク系キックスではFOAMPOSITEシリーズを重点的に撮影し、40種類以上を掲載した。企画当時のスニーカーシーンでは、MORE UPTEMPOの人気がやや高かったが、タイミング的にMORE UPTEMPO とSupremeのコラボレーションモデルが発売される直前で、図鑑としては物足りなくなる懸念があった。そこで『ナイキ・バッシュ・コレクション』ではFOAMPOSITEにフォーカスを当て、オリジナルカラーである"ROYAL"を3世代紹介すると共に、"GALAXY"や"SHARPIE"、"Supreme"といったレアモデルに加え、多数のインラインカラーを紹介。古着屋やネットオークションでFOAMPOSITEを見つけた際に、何年に発売されたモデルかが分かる資料性もフォローしたのだ。

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前代未聞の持ち込みスニーカー撮影会

『ナイキ・バッシュ・コレクション』の製作過程では、スニーカーの持ち込み撮影会を実施した。これは都内のカフェスペースの一部を借り、スニーカーヘッズに自慢のコレクションを持ち込んで頂き、そこで掲載したスニーカーを掲載するもの。恐らくスニーカー本としては初の試みだろう。参加する側から見れば交通費は自腹で、自身のスナップが掲載されることもなく、良い条件とは言い難い。果たして参加者が現れるのかという不安を抱きつつ、見切り発車的に告知したのだ。そして撮影会の当日、幸いなことにとそれなりの参加者数に恵まれ、ストリートで人気のバッシュだけでなく、これまで復刻が実現していない1990年代のスニーカーも撮影することができた。これにより、オールドスクールとハイテク・キックスをつなぐ名作が補完できたため、『ナイキ・バッシュ・コレクション』の構成がほぼ固まったのである。編集の立場からすると非常にありがたい持ち込みスニーカー撮影会となったが、現場の仕切り担当としては、撮影会に集まったスニーカーヘッズが交流するスペースが充分に確保できておらず、参加者に迷惑を掛けてしまったのは反省点だ。スニーカーヘッズが集まり、スニーカーに対する愛情を語り合う"スニ会"のひとつのバリエーションとして、持ち込みスニーカー撮影会を実施する意味はあるのかもしれないが、そのためにはホスピタリティを整えなくてはならないと痛感した。今後、同様の持ち込みスニーカー撮影会を実施するのであれば、会場のキャパシティを再検討する必要があるだろう。

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