スニーカーファンブック2023

双葉社スーパームック
スニーカーファンブック2023

“皆で創るスニーカー本”をコンセプトに様々なご協力を得て1冊の本に仕立てる『SFB2023』。今回の巻頭特集はNIKEとSTUSSYのコラボレーションスニーカーだ。その概要は巻頭特集の扉ページに纏めているので、ここでは裏話的に、筆者とSTUSSYの昔話をお伝えしようと思う。

筆者が自身のセレクトショップ『HAND CARRY』を神奈川県平塚市に構え、バイヤーとして渡米していた1990年代後半にはSTUSSYとNIKEのコラボスニーカーは未だリリースされておらず、STUSSYと言えばスニーカーコーデの鉄板ブランドと言う印象が強かった。当時はSupremeのボックスロゴTシャツや“裏原系”のアパレルも話題にはなっていたものの、『HAND CARRY』が海まで歩いても数分と言うロケーションのショップだった事もあり、サーフカルチャーに紐づくSTUSSYの人気が圧倒的だった。

そうした人気もあってロサンゼルスでスニーカーを買い付ける際には、STUSSYも一緒に買い付けていたのである。新作はメルローズ(当時はかなり外れの路面店だった)で購入し、USA製のTEEを巨大なフリーマーケットである“ローズボウル”でDigするのがお約束になっていた。国内で人気が高かったショップ別注のNIKE製ナイロンセットアップの新作を150ドル前後で買い付けていたのに対し、STUSSYのちょっと良い感じの新作アウターは400ドルを超えるのが当たり前。買い付け予算を結構圧迫したものの、STUSSYの新作を待ち望む常連も居たので外すわけにはいかなかったのである。ただ、その“STUSSYの新作を待ち望む常連”の中に思いもしなかったプロフィールを持つ人物が居た。

STUSSYの新作が入荷すると必ず購入し、買い付け時には「こんなアイテムが欲しい」とオーダーする常連のひとりに、市内に住む黒人男性が居た。彼のセンスは抜群でアイテム選びの参考にもさせてもらって居たのだが、ある時に他のショップ経営者から「彼はSTUSSYの新作を中国の工場に送ってフェイクを生産して都内で卸すバイヤーだ」と聞かされたのだ。今思えば原宿駅前のテント村などで大量に売られていたフェイクの一部は、同じ手口で生産されていたのだろう。

もちろんその事実を知ったからには彼に商品を売る訳にはいかず、タイミングを見て出入り禁止にしている。ただ彼自身のキャラクターは人懐っこくて魅力があり、彼の息子も本当に可愛らしかった。彼のビジネスが決して許され無いのは理解していた。それでも面と向かって「君にはもう売ることができない」と伝えた時は本当に辛かったのを今でも鮮明に覚えている。別の立場で知り合っていたならば良い友人になったのだと、今でも思っているのだ。

B5判フルカラー:112ページ

2023年2月16日発売

1,650円(本体1,500円)

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