社員インタビュー

文芸第一出版部
(旧・文芸出版部)

森 広太

【経歴】
2005年入社、営業局販売促進部に配属。
2006年に週刊大衆編集部に異動。取材班、グラビア班を担当。その後ファッション誌編集部に異動し、小森純や鈴木奈々の書籍を刊行。
再び週刊大衆編集部を経て2016年に文芸出版部に異動。2017年に時代小説シリーズ『空也十番勝負 青春篇』(著:佐伯泰英)を立ち上げる。

――文芸出版部の仕事について

 文芸誌『小説推理』、web文芸マガジン『カラフル』の定期誌で作品を担当するほか、書き下ろし小説や文庫化もすべて担当します。大手出版社では雑誌、単行本、文庫化とそれぞれに担当編集者がいますが、弊社の文芸部門はそこまでの規模ではないため、作品が誕生する段階から最終形の文庫になるまですべてのプロセスを担当することができます。ですので、作家さんとの関係は濃密。単行本、文庫化、文庫書き下ろしを合わせて、毎月なんらかの小説を刊行しています。
 一番大事な仕事は原稿依頼をすることです。そして、それをヒット作にすること。双葉社では大沢在昌さんや湊かなえさんを輩出した小説推理新人賞を主催していますが、そのほかの出版社の文学新人賞なども常にチェックしています。そして、「この作家さんにお願いしたい!」「こんなミステリーを書いてもらいたい!」と思ったら依頼しにいきます。依頼してから最短で1年ほどで書籍化、ベストセラー作家の場合は5年、原稿を待つこともあります。それでも「この人に双葉社で書いてもらいたい!」と思ったら、何年でも待ちます。
 私の担当作は警察小説や医療ミステリーなどのエンタメ作品が多く、興奮と感動を味わえる小説に囲まれて日々仕事をしています。

――ご自身が担当した作品について

 2020年の本屋大賞にノミネートされた知念実希人さんの『ムゲンのi』(上下巻)を担当しました。知念さんは『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』と2年連続で本屋大賞にノミネートされているベストセラー作家です。原稿を依頼したのは、私が文芸出版部に異動した直後のこと。それから3年ほど経ち、幸運にも超大作のミステリーを書いていただけることになりました。2018年末に『カラフル』での連載が始まり、すぐに「これはすごい作品だ!」と話題になりました。発売前から営業部も含め知念さんと話し合い、キャッチコピーや書店訪問など、綿密な販売促進戦略を練りました。
 知念さんは書店員さんのファンがすごく多いので書店回りには特に力を入れました。北海道、東北、沖縄を除く全国の100軒以上の書店に知念さんをお連れし、サイン本を作成させていただきました。その冊数は数千冊です。
 その結果、9月の発売から3ヶ月で累計10万部を突破。知念さん自身も「最高傑作」と自負する作品にふさわしい結果を出せました。

――仕事をする上で大変なことや、必要とされる能力は?

 時間が足りません。あまり読むのが早い方ではないので、もっと本を読みたいのですが、1日が24時間では足りません。小説以外に好きなノンフィクションを読んだり、話題の映画を観たり、どう興味や知識の幅を広げるかが今の仕事の課題です。
 必要な能力は特にないと思いますが、「待つ」ことができれば大丈夫です。週刊誌でも文芸でもファッション誌でも、原稿や写真やデザインの仕上がりを待つ日々が一生続きます。

――双葉社ってどんな会社?

 古き良き昭和の雰囲気を漂わせながらも、健全経営を続ける令和の楽園的出版社。レトロな5階建ての社屋やゲラが散乱する雑然とした編集部など、実際に見てみるとびっくりするかもしれません。でも、同族経営ではないし、社員の働き方は自由度が高く、やりたい企画はたいてい通る。何よりすごいのは書籍もコミックも名だたるヒット作がたくさんある。「働きやすい出版社ランキング」があったら、ダントツで1位になると自負しております。

――未来の新入社員に一言

 楽しいですよ。この会社にいると、何が起こるかわかりません。入社1年目で全国の書店を回っていた新人は、2年目には風俗店や政治家の取材で夜の世界を駆け巡り、30歳になる頃にはギャルファッション誌でモデル相手に右往左往する日々。気がつくと、国民的ベストセラーシリーズの原稿を誰よりも早く読める仕事をしていました。私の15年の双葉社人生はそんな感じです。

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