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中国における『クレヨンしんちゃん』訴訟の勝訴判決について

2012年4月17日
株式会社双葉社

 中国において争われていた『クレヨンしんちゃん』著作権侵害民事訴訟及び行政訴訟問題について、弊社の主張がようやく支持されましたので、それぞれの勝訴判決及び経過をご報告申し上げます。

■著作権侵害訴訟

 本件は、中国企業が無断で『クレヨンしんちゃん』の図形及び「 ()()小新(シャウシン)(クレヨンしんちゃんを示す中国語)」を付した子ども靴等を販売した行為に対して、弊社が管理している著作権の侵害を理由に、中国企業を相手どり2004年8月に上海市第一中級人民法院に提訴した事案です。

〈経過及び今回の判決〉

 2004年8月に下された本件の仮処分では中国企業の著作権侵害が認められたものの、著作権と商標権の抵触について中国の司法解釈が錯綜し、本件は上海市第一中級人民法院、上海市高級人民法院で審理中断の後に、共に却下(不受理)処分を受けました。弊社が最高人民法院に再審請求した結果、2008年11月に「受理すべき」との差戻し判決が下り、その後、本件は上海市高級人民法院での再審査審理を経て、ようやく上海市第一中級人民法院に差戻されました。2011年9月に審理再開となり、2012年2月15日に口頭審理が行われました。
 このように8年もの長い年月を経て、2012年3月23日にようやく弊社の主張を認める判決が下されました。この判決によって、中国企業の著作権侵害行為が認められ、弊社が管理している『クレヨンしんちゃん』の図形と文字の著作権が認められました。弊社が勝訴となった今回の一審判決内容の一部をご報告いたします。

〈判決の内容一部要約〉

『クレヨンしんちゃん』こと『蝋筆小新』の漫画イメージは、原作者臼井儀人によって完成された創作であり、そのキャラクターイメージ、顔の表情等は独創性があり、わが国著作権法で保護されるべき芸術作品である。原告(双葉社、以下「原告」という)はその著者である臼井儀人及びその継承人からそれぞれ権利委託を受けており、独占的に著作財産権を行使する権限を有し、これに基づいて著作権侵害訴訟を提起する権利を有している。
 文字『』は、文字書体にデザイン処理を施して創作されたものであり、中国文字の繁体字を用い、透かし彫り及び特殊な書体配列方法で独創的に表現されており、わが国著作権法で保護されるべき芸術作品に該当する。
 被告(上海恩嘉経貿発展有限公司、以下「被告」という)は原告が支配権を専有する複製、発行及びインターネット上の公衆送信行為を実施し、原告の著作権を侵害した。それらの行為が商標権の合法的な使用だという被告の抗弁理由については、著作権と商標権とはそれぞれ独立した民事上の権利であり、それぞれの権限を有するものである。よって、権利者が自らの合法的権利を行使しているときに、他人の合法的権利を侵害してはならない。被告は自分の商標使用権を行使している過程において、先にあった著作権者の専用権を無断で行使している。その行為は著作権侵害であり、相応する著作権侵害責任を負わねばならない。
被告は、本判決の効力発生日から著作権侵害行為を即時停止しなければならない。被告は本判決の効力発生日から10日以内に原告に対して経済的損失25万人民元(日本円約330万円)と原告が侵害停止のために支払った費用5万人民元(日本円約66万円)を支払わなければならない。

■無効審判及び行政訴訟

上記民事訴訟の提起と共に、弊社は2005年1月に中国の商標評審委員会(以下「TRAB」という)に対し、中国企業が登録した商標(下記係争商標一覧表、計9件)の商標権無効審判請求を提起しました。しかし、すでに5年の除斥期間を経過しているという理由で登録維持の審決が下されました。この審決に対して、弊社は2006年2月に北京市第一中級人民法院に行政訴訟を提起し、その後、北京市高級人民法院に上訴しました。2006年12月20日に北京市高級人民法院より下された判決には、「TRABが下した裁定及び一審判決には一部の事実認定において誤りがあり、是正しなければならない。TRABは係争商標の無効審判請求を受理し、再審査を行わなければならない」とあり、その判決に従って、弊社は2007年3月にTRABに無効審判を再度請求、TRABはそれを受理しました。この無効審判においては弊社の主張が認められ、係争商標は不正手段によって取得された商標として無効となっております。
 無効または取消となった商標は下記の通りです。

〈中国企業が登録した係争商標一覧表(計9件)〉

係争商標 分類
(商品)
経過及び結果
図形
9類
(眼鏡等)
TRABによる無効審決(確定)
商標権失効
16類
(文房具等)
TRABにより無効審決が下されたが、商標権者がTRABに対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持
商標権者が上訴。
→二審判決・・・一審維持(確定)
商標権失効
18類
(鞄等)
TRABより無効審決が下されたが、商標権者がTRABに対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持
商標権者が上訴。
→二審判決・・・一審維持(確定)
商標権失効
25類
(アパレル等)
・TRABより無効審決が下されたが、商標権者がTRABに対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持(確定)
・弊社代理人はこの商標に対し3年不使用取消(注)も請求しており、TRABより取消審決が下された。商標権者が同審決に対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持(確定)
商標権失効
28類
(玩具等)
3年不使用取消審決(注)により、本件商標登録は取消された。
商標権失効
文字
9類
(眼鏡等)
TRABによる無効審決(確定)
商標権失効
18類
(鞄等)
TRABより無効審決が下されたが、商標権者がTRABに対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持
商標権者が上訴。
→二審判決・・・一審維持(確定)
商標権失効
25類
(アパレル等)
・TRABより無効審決が下されたが、商標権者がTRABに対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持(確定)
・弊社代理人はこの商標に対し3年不使用取消(注)も請求しており、TRABより取消審決が下された。商標権者が同審決に対して行政訴訟を提起した。
→一審判決・・・審決維持(確定)
商標権失効
28類
(玩具等)
3年不使用取消審決(注)により、本件商標登録は取消された。
商標権失効
(注)「不使用取消制度」とは、商標権者が継続して3年以上に登録商標を指定商品に使用していないとき、第三者がその登録の取消を商標局に求めることができる法的手続き。

〈弊社コメント〉

 2004年の提訴から8年の長い道のりでしたが、この度『クレヨンしんちゃん』の著作権が中国の司法及び行政に認められ、一定の成果を得ることができました。 著作権侵害訴訟においては、昨年の審理再開まで長い間、本件訴訟は中止されておりました。弊社の主張が認められるまで8年を経ましたが、真の権利者の権利はようやく保護されたといえます。『クレヨンしんちゃん』のイラストは、独創性があり中国著作権法で保護されるべき芸術作品だと判断されました。同時に、弊社が著作権を有する「蝋筆小新」のタイトル文字も、中国著作権法で保護されるべき芸術作品だと判断され、大変有意義な判決と受けとめております。
 そして、行政訴訟については、中国の裁判所は「中国企業の抜駆け商標登録は不正利益を獲得するための行為であり、かかる行為が誠実信用の原則に反して双葉社の特定権益を侵害した上、中国の商標登録管理の秩序及び公共秩序をも乱し、多大の行政審査資源及び司法資源を浪費し、公共の利益に損失を生じさせた」と認定し、係争商標の無効審決を支持する判決を下しました。登録から5年を経過した不正登録商標の無効が認められたことは、画期的な判決であると評価しております。
 最後になりましたが、『クレヨンしんちゃん』を応援していただいているファンの皆様、そして、経済産業省、日本貿易振興機構、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本弁理士会をはじめ関係各位からは、本件において多大なるご支援をいただきました。この場をお借りして、御礼申し上げます。また、今回の訴訟で弊社の主張を支持していただいた北京及び上海の各人民法院及び最高人民法院に敬意を表します。