四六判上製 328ページ
定価 本体1500円+税
ISBN978-4-575-24112-9
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早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリマウント大学院にて、映画・TV製作修士号取得。2008年、「雪の花」で第3回Yahoo! JAPAN文学賞を受賞。09年、受賞作を含む短編集『雪の花』にてデビュー。13年に発表した『暗黒女子』は大きな話題を呼び、映画化された。他の著書に『聖母』『放課後に死者は戻る』『鏡じかけの夢』『婚活中毒』などがある。

 記憶を保てない女性が失われた過去を探す、というアイデアを長年温めていました。どのようなストーリーにすればいいか悩んでいたのですが、ふと「自分が人を殺したかどうかすらわからなければ、大変な恐怖だろうな」と思いあたりました。その発想を小さな種にして、育てた物語が『ガラスの殺意』です。
 主人公は男を殺したと自首して逮捕されます。現場は彼女の自宅で、血まみれの凶器、指紋など証拠はすべて揃っています。しかも被害者は、かつて主人公の両親を殺した通り魔だったので、確固たる動機もあります。けれども彼女は自首したことも、男を殺したことも覚えていないのです。
 物語は、一生懸命記憶を取り戻そうとする彼女の視点と、殺人を客観的に証明しようとする刑事の視点から、交互に描かれます。
 実は『ガラスの殺意』は、この刑事の物語でもあります。刑事には認知症の母親がおり、頼もしかった母が記憶を失っていく切なさや、介護生活の大変さを知っています。刑事が、記憶障害を持つ主人公を追及する過程を通して、母親との関係を見つめなおす――欲張りですが、『ガラスの殺意』にはそんな要素も盛り込みました。
 2つの視点を行き来しながら物語は思いがけない方向へ進み、ある場所でラストシーンを迎えます。この場面にはとてもこだわり、何度も書き直しました。
 私の作品のなかでも、最高のエンディングだという自信を持っています。ぜひお読みください!

秋吉理香子さん待望の新刊は、話題作『聖母』に続く長編サスペンス・ミステリーです。血まみれの包丁を手にした女性の前には、愛する両親を殺めた憎い男の死体が! ところが、女性には男を殺した覚えがないのです。警察に捕らえられたものの、記憶の定まらない女性に、戸惑いを覚えるかもしれません。しかし、衝撃的な幕開けからは絶対に想像できない結末が待っています。それを明かせないのが大変もどかしいですが、印象的なラストシーンに満足していただけると信じています。「イヤミスの女王」秋吉理香子さんの新境地、ぜひお楽しみください!

(「小説推理」2018年10月号掲載 )

 
双 葉 社