時は大正四年、初冬。秋田・能代の網元屋敷に奉公する十七歳の山中ミツは、両親を亡くして女学校を中退するという辛い経験をしながらも、懸命に働いていた。
　厳しいと評判の奥方にも可愛がられ、日々の仕事に打ちこむミツだったが、思わぬ悲劇に襲われる。かねてよりミツの美しさに淫欲を燃やしていた跡取り息子の幹也に犯され、処女を奪われてしまったのだ。
　絶望に駆られ、両親の後を追うように能代の海で入水自殺を図るミツ。だが、沖へと流される直前、十河恭平と名乗る謎の男に救われる。
「お前は一度死んだ人間だ。俺と一緒に東京で生き直さないか」。もはや行き場のないミツは、恭平に誘われるままに故郷・能代を去ることを決意する。
　そして、舞台は東京へ。華やかな魔都に聳える白亜の洋館では、ミツを最高級のリヴィング・ドォル——すなわち「令嬢人形」へと生まれ変わらせる数々の調教が待っていた。
　類まれな美貌と知性を持つ天涯孤独のヒロインが、数奇な運命に立ち向かい、令嬢人形へと華麗な変身を遂げる！　大正ロマンの香りに乗せて送る波瀾万丈の濃蜜ラブストーリー（毎週木曜日更新）。