匂いに恋して
   

 

おんな酔い街

江見宏

   

  48歳の平凡なサラリーマン、吉田伊知郎の唯一の慰めは、勤め帰りにフラリと立ち寄る飲み屋での一杯。長年連れ添った妻が他の男の元に去って以来、独身を貫いている。
 結婚生活で自分に足りなかったのは何だったのか。なぜ妻の本音に気づいてやれなかったのか——後悔し、考える日々を送ったことで、伊知郎はいつしか女性の気持ちを自然に受け止められる男となっていた。
 今宵もひとり酒を楽しむ伊知郎の前に、悩める美女が現れる。盃を重ね、飲むほどに酔うほどに心と体を開いていく二人。切なくも淫らな夜は更けてゆき——。
 人生のほろ苦さ、男女の愛しさを情緒豊かに描く異色の"遅咲き大型新人"、渾身のデビュー!(毎週木曜日更新)