『漫画アクション』に連載された北朝鮮拉致ドキュメンタリーコミック『めぐみ』(横田滋・早紀江 原作、監修)、『奪還』(蓮池透 原作・監修)、『母が拉致された時 僕はまだ1歳だった』(飯塚耕一郎
原作・監修)の3部作がこの秋、一挙に文庫化された。軟派なイメージの『漫画アクション』に社会派漫画を企画、編集を担当した副編集長の染谷誠さん(46)に話を聞いた。
ドキュメンタリーコミックは2005年、『漫画アクション』のリニューアル創刊に際し、何か新ジャンルをと企画された。
「ギャグやスポーツ物など何でもありの総合漫画雑誌に、突破口をつくりたかった。読者は20代後半から40代の大人の男性が中心で、ニュース性の高い物を好む傾向があります。大手の出版社ではセーブする題材かもしれませんが、ぼくらなら小回りがきくし、被害者の方の声を届けることができるのではないかと思った」と話す。

最初に取り上げたのが、蓮池さんの手記『奪還』だった。作画は、リアルな絵で迫真の空気を描ける本そういち氏に依頼。「賭けのような新企画」がスタートした。
「クレームへの対応なども覚悟していましたが、応援のメッセージばかりで、アンケート回収でも常にトップ」と予想外の反響を集めた。読者の手紙には、「拉致問題を身近にとらえることができた」「人ごとだと思っていたが感情移入できた」という声が多かったという。
原作者への取材は、連載に合わせて2週間ごとに1、2時間。うそがないこと、客観性を忘れないことを、確認作業を徹底することにこだわった。
「報道は何か事が起きれば一番乗りを狙います。でも私たちは定期的に取材にうかがいました。これは横田さんご夫妻にも新鮮だったそうです」
取材内容も、家の間取りや、櫛の色など日常の小さな生活のひとこまが中心。「漫画は言葉で聞くより、強い効果を発揮することができる表現です。敷居の低さも漫画の力。娯楽のイメージが強いでしょうが、こういうシリアスな作品も社会への意義があるのではないかと自負しています」
ドキュメンタリーコミックというジャンルは今後も続けていく。もちろん、拉致問題の関心は消えない。
「とてもやりがいのある作業でしたが、拉致問題はまだ終わっていません。拉致された方、残された家族全員が帰国し、みなさんがすべてを話せるとき、それをまた漫画にしたい。そのときが本当の結末だと思います」(田窪桜子)